テクニカルエンジニア(ネットワーク)平成11年午後I問3

 電子メールのセキュリティに関する次の記述を読んで、設問1~4に答えよ。

 書籍販売会社のF社は、店頭での販売を行うかたわら、早くからインターネットを
利用した書籍販売に力を入れてきた。WWWサーバを自社内に設置して、顧客による
書籍の検索を可能にし、注文を受け付けている。また、顧客の問合せとその回答には、
電子メールを利用してきた。

 F社はこれまでに、社員全員が電子メールを利用できるよう逐次設備を拡充してき
ている。現在では、社員の内60人は従来から利用してきた電子メールシステム(以
下、Cメールという)を利用し、残り210人はグループウェアを利用して電子メール
を送受信している。インターネット販売用システムには、Cメールが必須となってお
り、簡単にはなくすことができない。このため、Cメールを搭載したPC(以下、CP
という)とグループウェアを搭載したPC(以下、GPという)の2種類を混在使用し
ている。

 現在のF社社内システム構成を図に示す。


 外部からきたメールは、インターネットメールサーバにいったん格納され、ファイ
アウォールでチェック後、Cメールサーパに転送される。グループウェアユーザをあ
て先とするメールは、更にメッセージ転送サーバで変換された後、グループウェアサ
ーバに転送される。

 最近、F社のインターネットメールサーバがジャンクメールの中継点に使われると
いう事件が発生した。すなわち、外部の何者かがF社のインターネットメールサーバ
を利用して、ほかのサイトに大量のメールを発信していることが発見された。これに
対し、F社は次の緊急対策を考えた。

 ①発見された当日の夕方から翌朝まで、とりあえずFWを停止する。
 ②インターネットメールサーバの設定を変更し、犯人とおぼしきIPアドレスか
  らのメッセージを受け付けないようにする。
 ③インターネットメールサーバソフトをバージョンアップして、メールアドレス
  のチェック機能を入れ、中継点になり得ないようにする。

 F社は翌朝までFWを停止し、その間に②及び③の検討を行った結果、どちらの案
も実施可能であることが分かった。しかし、実際には③を実施し、②は実施しなかっ
た。

 この件はこれらの対策によって沈静化した。

 F社ではその後、社内でのセキュリティ意識の高まりから、コンサルティング会社
のG社の指導を受けて、社内セキュリティポリシを策定した。このセキュリティポリ
シでは、機密区分を定義して、社内情報を(ア)社外利用可(レベル1)、(イ)社内利用だ
け(レベル2)、(ウ)社内関係者だけ(レベル3)の三つのレベルに分け、それぞれの
運用方法を定めている。また、社内メールはすべて暗号化する運用を目指すものとし
た。

 F社は更に、G社に対し具体的なセキュリティ改善策の提案を依頼した。

 G社による改善策を次に示す。

(1) インターネットメールサーバとファイアウォールの分離
   インターネットメールサーバとファイアウォールの共存は良くないと考えられま
  す。サーバ機を購入して公開セグメントに置き、インターネットメールサーバをそ
  ちらに移して、ファイアウォールから切り離すことをお勧めします。なぜなら、イ
  ンターネットメールサーバが破られたとき、ファイアウォールも破られる可能性が
  高いからです。

(2) パスワードの運用
   Cメールでもグループウェアでも、個人別にパスワードが決められ、自分あての
  メールには、自分しかアクセスできないようになっています。そのうちグループウ
  ェアに関しては、パスワードの暗号化もなされています。しかしながら、パスワー
  ドを【 a 】する運用がなされていません。これを改善するために、システ
  ム管理機能の利用をお勧めします。この機能は現在利用されていませんが、グルー
  プウェアがもっている機能です。具体的には、パスワードの利用可能日数の指定に
  よって、利用者が同一パスワードを長期間使い続けられないようにする運用が可能
  です。さらに、【 b 】パスワードは最大20個までチェックされ、これらを
  再使用できなくすることが可能です。

(3) パスワードの暗号化
   Cメールの現在のバージョンでは、パスワードが暗号化されておらず、また入力
  されたパスワードに対して、利用可能日数のチェックが行われていません。これを
  解決するためにCメールのバージョンアップをお勧めします。

(4) メールの暗号化
   GPからGPへのメールは暗号化されていますが、GPとCP間、及びCPからCP
  へのメールは暗号化されていません。対策としてGPとCPすべてに、共通の暗号
  化ソフトを導入することが考えられます。しかしそうした場合、GPからCPにメ
  ールを送る際のGPでの実際の運用では、メールの送信の前に暗号化処理を実施し、
  その後で送信するという手間が発生し、暗号化ソフトが積極的には利用されないと
  推測されます。現在GP間で行われているように、送る側も受ける側も意識しない
  で、すべてのメールを暗号化する運用を実現することができません。そこで、共通
  の暗号化ソフトを導入する方法でなく、CPにも【 c 】する方法をご検討く
  ださい。

(5) 機密区分による運用
   現在は機密区分を利用する運用となっていません。御社では、すでにセキュリテ
  ィポリシ策定時に三つの機密区分を定義しています。グループウェアをカスタマイ
  ズすることによって、メールのヘッダ情報に機密区分を設け、どのレベルか選択で
  きるようにする運用が可能です。メールを作成する際に画面上のボタンをクリック
  することによって、機密区分を指定できるようにします。レベル2、3の場合は、
  【 d 】
の発信を禁止し、レベル3の場合は、メール転送を禁止する機能の作
  り込みをお勧めします。

  F社はこれらの改善策を吟味した結果、次の結論を出した。

 ① 改善策(1)~(4)は、速やかに実施する。
 ② 改善策(5)については、一部変更して実施し、併せて提案外の対策も実施する。


設問1

 ジャンクメールに関する次の問いに答えよ。

(1)  F社が対策案②を実施しなかった理由を、20字以内で述べよ。

(2)  対策案③に“メールアドレスのチェック”とあるが、具体的には何をどのよ
  うにチェックするのかを、40字以内で述べよ。

(3)  ジャンクメールの中継点にされても、F社内のファイルが漏えいするわけで
  も、壊されるわけでもない。困る理由は何かを、40字以内で述べよ。

設問2

 本文中の【 a 】【 d 】に入れる適切な字句を、それぞれ10字
以内で答えよ。

設問3

 改善策(4)では、メール自体の暗号化について述べている。ファイアウォールに
よって守られているのに、暗号化する理由を、20字以内で述べよ。

設問4

 改善策(5)では、“機密区分を指定できるようにする”ことを提案しているが、
一部変更し、提案外の対策を併せて実施することになった。これはF社内で、利
用者が指定しなければ意味がないし、また指定しても間違っていれば効果は上が
らないなどの意見があったからである。改善策(5)に関する次の問いに答えよ。

(1) 改善策(5)をどのように変更すればよいかを、20字以内で述べよ。

(2) 社内システムの変更に加えて、F社が実施すべき“提案外の対策”を、40
  字以内で述べよ。